舌癖(舌のクセ)が歯並びに与える悪影響:原因から改善方法まで徹底解説

舌癖(舌のクセ)が歯並びに与える悪影響:原因から改善方法まで徹底解説

はじめに

歯並びの悪化原因として、遺伝や顎の大きさを思い浮かべる方は多いでしょう。しかし、意外と知られていないのが「舌癖(ぜつへき)」の影響です。舌癖とは、無意識のうちに舌を間違った位置に置いたり、舌で歯を押したりする習慣のことを指します。この何気ない癖が、実は歯並びや噛み合わせに深刻な影響を及ぼすことがあります。特に成長期の子どもの場合、舌癖が顎の発育や歯の位置に大きな悪影響を与える可能性があります。本記事では、舌癖が歯並びに与える影響、その原因、そして改善方法について詳しく解説します。

舌癖とは何か

舌癖とは、安静時や飲み込むとき、話すときなどに、舌が本来あるべき正しい位置にない状態、または舌で歯を押す習慣のことです。正常な舌の位置は、舌先が上顎の前歯の少し後ろの硬口蓋に軽く触れている状態で、舌全体が上顎に吸着しています。

しかし、舌癖がある人は、舌が下の位置に落ちていたり、舌先が前歯を押していたり、飲み込むときに舌を前に突き出したりします。このような間違った舌の使い方が習慣化すると、持続的に歯に力が加わり、歯並びや顎の発育に悪影響を及ぼすのです。

舌は非常に強い筋肉の塊で、その力は想像以上に強力です。舌が歯を押す力は、個人差はありますが数百グラムから1キログラム以上にもなるとされています。この力が一日中、何年にもわたって歯に加わり続けると、歯は徐々に動いてしまいます。

舌癖が引き起こす歯並びの問題

舌癖は様々な歯並びの問題を引き起こします。最も代表的なのが開咬(オープンバイト)です。開咬とは、奥歯で噛んでも前歯が閉じない状態のことで、舌癖による前歯への持続的な圧力が主な原因の一つとされています。

飲み込むときに舌を前に突き出す癖があると、その都度前歯が外側に押され、徐々に前歯の間に隙間ができてしまいます。一日の飲み込み回数は約2,000回とも言われており、その度に歯が押されることを考えると、影響の大きさが理解できるでしょう。

また、舌癖は上顎前突、いわゆる出っ歯の原因にもなります。舌で上の前歯を内側から押し続けることで、前歯が前方に傾斜してしまいます。特に成長期の子どもの場合、歯を支える骨も柔らかいため、舌の力による影響を受けやすくなります。

さらに、舌が常に前歯の間に入り込む癖がある場合、正中離開という上の前歯の真ん中に隙間ができる状態になることもあります。この隙間はすきっ歯と呼ばれ、審美的な問題だけでなく、発音にも影響を与えることがあります。

舌の位置が低い状態が続くと、上顎の成長が不十分になり、歯が並ぶスペースが狭くなります。その結果、叢生(そうせい)と呼ばれる、歯が重なり合って生える状態になることもあります。

舌癖の原因

舌癖が形成される原因は複数あります。最も一般的なのが、幼少期の指しゃぶりやおしゃぶりの長期使用です。これらの習慣があると、飲み込むときに舌を前に出す動作が身につきやすくなります。多くの専門家は、3歳頃までに指しゃぶりやおしゃぶりをやめることを推奨しています。

口呼吸も舌癖の大きな原因です。鼻詰まりやアレルギー性鼻炎などで鼻呼吸が困難な場合、口で呼吸するようになります。口呼吸をするためには舌を下げる必要があり、この状態が続くと舌が常に低い位置に置かれる癖がつきます。

また、舌小帯短縮症という、舌の裏側のひだ(舌小帯)が短い状態も舌癖の原因になります。舌小帯が短いと舌の動きが制限され、正しい位置に舌を置くことが物理的に困難になります。この場合は、舌小帯を切除する手術が必要になることもあります。

扁桃腺やアデノイドの肥大も原因の一つです。これらが大きいと気道が狭くなり、舌を前方に突き出して気道を確保しようとするため、舌を前に出す癖がつきやすくなります。

さらに、離乳食の進め方や食事の際の咀嚼習慣も影響します。柔らかいものばかり食べていると、舌や顎の筋肉が十分に発達せず、正しい舌の使い方が身につきにくくなります。

舌癖のチェック方法

自分や子どもに舌癖があるかどうかは、以下の項目でチェックできます。

まず、安静時の舌の位置を確認しましょう。リラックスしているときに舌がどこにあるか意識してみてください。舌先が前歯の裏側や歯と歯の間に触れている場合は、舌癖の可能性があります。正常な位置は、舌先が上の前歯の少し後ろの硬口蓋に軽く触れている状態です。

飲み込むときの舌の動きも重要です。水を口に含んで飲み込むとき、鏡を見ながら観察してみてください。舌が前に出てくる、唇に力が入る、顎に梅干しのようなシワができるといった場合は、舌癖がある可能性が高いです。

話すときに舌が見える、特にサ行、タ行、ナ行、ラ行の発音時に舌が前に出る場合も舌癖のサインです。また、常に口が開いている、口呼吸をしている、いびきをかく、よだれが出やすいといった症状も、舌癖と関連していることがあります。

舌癖が及ぼす歯並び以外への影響

舌癖の影響は歯並びだけにとどまりません。発音にも大きな影響を与えます。特にサ行、タ行、ナ行、ラ行などの発音が不明瞭になることがあります。これは、これらの音を出すときに舌先を上顎の前歯の裏側に当てる必要があるためです。舌癖があると正しい舌の位置に置けず、音が歪んでしまいます。

飲み込み機能にも影響します。正常な嚥下では、舌全体を上顎に押し付けて飲み込みますが、舌癖があると舌を前に突き出して飲み込むため、非効率的な飲み込み方になります。これが続くと、顎や首の筋肉に過度な負担がかかり、頭痛や肩こりの原因になることもあります。

口呼吸を伴う舌癖の場合、口の中が乾燥しやすくなります。唾液には口内を洗浄し、細菌の繁殖を抑える働きがありますが、口が乾燥するとこの機能が低下し、虫歯や歯周病、口臭のリスクが高まります。

また、顔貌にも影響を与えます。舌癖により口が常に開いている状態が続くと、いわゆるアデノイド顔貌と呼ばれる、顔が縦に長く、顎が後退した特徴的な顔つきになることがあります。

さらに、睡眠時無呼吸症候群のリスクも高まります。舌の位置が低いと、睡眠中に舌が喉の奥に落ち込み、気道を塞ぎやすくなります。これにより、いびきや睡眠時の無呼吸が起こり、睡眠の質が低下します。

舌癖の改善方法

舌癖を改善するには、まず原因を特定することが重要です。鼻呼吸ができない場合は、耳鼻科を受診してアレルギー性鼻炎や扁桃腺肥大などの治療を行います。口呼吸から鼻呼吸に切り替えることが、舌癖改善の第一歩となります。

舌小帯短縮症がある場合は、歯科医師や口腔外科医に相談し、必要に応じて舌小帯切除術を検討します。この処置により舌の可動域が広がり、正しい位置に舌を置きやすくなります。

舌癖の改善には、筋機能療法(MFT)が効果的です。これは、舌や口の周りの筋肉を正しく機能させるためのトレーニングです。歯科医院や矯正歯科で指導を受けることができます。

代表的なトレーニングとしては、スポットポジショニングがあります。これは、舌先を上顎の正しい位置(スポット)に置く練習です。毎日意識的に舌を正しい位置に置くことで、徐々に正しい舌の位置が習慣化されます。

ポッピングと呼ばれるトレーニングもあります。舌全体を上顎に吸着させた状態から、舌を離す際に「ポン」という音を鳴らす練習です。これにより舌の筋肉が鍛えられ、正しい嚥下パターンを身につけることができます。

また、飲み込み練習も重要です。水を少量口に含み、舌を上顎に押し付けるようにして飲み込む練習を繰り返します。最初は難しく感じるかもしれませんが、毎日続けることで正しい飲み込み方が身につきます。

日常生活では、柔らかいものばかりでなく、適度に硬い食べ物をよく噛んで食べることも大切です。咀嚼により舌や顎の筋肉が鍛えられ、正しい舌の使い方が促進されます。

矯正治療と舌癖

歯列矯正を行う場合、舌癖があるとその効果が十分に得られなかったり、後戻りしやすくなったりします。矯正装置で歯を正しい位置に移動させても、舌癖が残っていれば、再び舌の力で歯が元の位置に戻ってしまうからです。

そのため、矯正治療を行う際は、舌癖の改善も同時に行うことが非常に重要です。多くの矯正歯科医は、治療開始前または治療中に舌癖の評価を行い、必要に応じて筋機能療法を併用します。

また、舌癖を防止するための矯正装置もあります。タングクリブやタンガードと呼ばれる装置は、舌が前に出るのを物理的に防ぎ、正しい舌の位置を意識させる役割を果たします。

まとめ

舌癖は、開咬や上顎前突、正中離開、叢生などの歯並びの問題を引き起こすだけでなく、発音障害、嚥下機能の低下、口腔内環境の悪化、顔貌への影響、睡眠障害など、全身の健康にも影響を及ぼします。

舌癖の原因としては、指しゃぶり、口呼吸、舌小帯短縮症、扁桃腺肥大などがあり、これらに対する適切な対処が必要です。改善には筋機能療法が効果的で、毎日のトレーニングにより正しい舌の位置と使い方を身につけることができます。

特に成長期の子どもの場合、早期に舌癖を発見し改善することで、将来的な歯並びの問題を予防できます。気になる症状がある場合は、歯科医師や矯正歯科医に相談し、適切な評価と治療を受けることをおすすめします。舌癖の改善は時間がかかりますが、根気強く取り組むことで、美しい歯並びと健康な口腔環境を手に入れることができます。

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