歯を削らない治療法が増えている理由

歯を削らない治療法が増えている理由

歯を削らない治療法が増えている理由

はじめに

近年、歯科治療の現場で「できるだけ歯を削らない」という治療方針を掲げる歯科医院が増えています。従来の歯科治療では、虫歯を発見したらすぐに削って詰める、という方法が一般的でしたが、現在では可能な限り歯を削らずに治療する「ミニマルインターベンション」という考え方が主流になりつつあります。なぜ今、歯を削らない治療法が注目されているのでしょうか。この記事では、その背景と具体的な治療法について詳しく解説していきます。

歯を削ることのリスク

まず、なぜ歯を削らない方がよいのか、歯を削ることのリスクについて理解しておきましょう。

歯は再生しない

歯は人体の中で最も硬い組織ですが、一度削ってしまうと二度と元に戻りません。髪の毛や爪のように再生することがないため、削れば削るほど歯の寿命は短くなっていきます。天然の歯は人工物では決して再現できない優れた機能を持っているため、できるだけ保存することが重要なのです。

歯が脆くなる

歯を削ると、残った歯質が薄くなり、強度が低下します。特に大きく削った歯は、噛む力に耐えられず割れやすくなります。また、詰め物や被せ物と天然歯の境目から二次的な虫歯が発生しやすくなり、再治療が必要になるケースも少なくありません。再治療のたびにさらに歯を削ることになり、最終的には歯を失う原因となります。

神経へのダメージ

歯を深く削ると、神経に近づくため、刺激による痛みや知覚過敏を引き起こす可能性があります。場合によっては神経を取る処置が必要になることもあります。神経を失った歯は栄養が供給されなくなるため、もろくなり、変色も起こりやすくなります。

ミニマルインターベンションという考え方

歯を削らない治療の基本となるのが「ミニマルインターベンション(Minimal Intervention:最小限の侵襲)」という概念です。これは2000年に国際歯科連盟が提唱した治療方針で、「できるだけ健康な歯質を残し、必要最小限の介入で歯を守る」という考え方です。

この考え方では、虫歯を早期に発見し、削る前の段階で進行を止めることを重視します。また、どうしても削る必要がある場合でも、虫歯の部分だけを最小限削り、健康な歯質は可能な限り残すようにします。予防を最優先し、治療が必要な場合も低侵襲な方法を選択することで、歯の寿命を延ばすことを目指します。

歯を削らない具体的な治療法

現在、さまざまな歯を削らない治療法が実践されています。具体的にどのような方法があるのかご紹介します。

初期虫歯の再石灰化療法

ごく初期の虫歯は、歯の表面からミネラルが溶け出した「脱灰」という状態です。この段階であれば、削らずに元の健康な状態に戻すことが可能です。フッ素を塗布したり、フッ素入りの歯磨き粉を使用したりすることで、溶け出したミネラルを歯に戻す「再石灰化」を促進できます。

また、唾液の分泌を促すことも重要です。唾液には口の中を中和し、再石灰化を助ける働きがあります。キシリトールガムを噛むことも、唾液分泌を促進し、虫歯予防に効果的です。

シーラント

奥歯の溝は複雑で深く、歯ブラシが届きにくいため虫歯になりやすい部位です。シーラントは、この溝をプラスチック樹脂で埋めて虫歯を予防する方法です。歯を削ることなく、溝に汚れが溜まるのを防ぎます。特に子どもの奥歯の虫歯予防に効果的で、生えたばかりの永久歯にも適用できます。

カリソルブ

カリソルブは、特殊な薬剤を使って虫歯を溶かす治療法です。虫歯に感染した部分だけを選択的に軟化させて除去できるため、健康な歯質を削る必要がありません。ドリルを使わないため、痛みや不快な音、振動もほとんどありません。ただし、適用できる症例には限りがあり、すべての虫歯に使用できるわけではありません。

ドックスベストセメント

ドックスベストセメントは、銅イオンの殺菌作用を利用した治療法です。虫歯を完全に除去せず、殺菌効果のあるセメントで封鎖することで、虫歯菌を無菌化します。深い虫歯でも神経を残せる可能性が高くなり、歯を大きく削る必要もありません。ただし、保険適用外の治療となるため、費用は高めになります。

レーザー治療

歯科用レーザーを使用した治療も、歯を削る量を最小限に抑えることができます。レーザーは虫歯部分だけを選択的に除去できるため、健康な歯質を残しながら治療が可能です。また、痛みや出血も少なく、治癒も早いというメリットがあります。

フッ素塗布とメンテナンス

定期的なフッ素塗布と専門的なクリーニングにより、虫歯の発生を防ぐことができます。歯科医院での定期的なメンテナンスは、虫歯を早期発見し、削らずに対処できる段階で介入するために不可欠です。

削らない治療が増えている背景

歯を削らない治療法が増えている背景には、いくつかの要因があります。

研究による科学的根拠の蓄積

長年の研究により、初期虫歯は削らなくても進行を止められることが科学的に証明されてきました。また、歯を削ることのデメリットや、最小限の介入で治療することの有効性についても、多くのエビデンスが蓄積されています。

治療技術と材料の進歩

接着技術や修復材料の飛躍的な進歩により、少ない削除量でも十分な強度と耐久性を持つ治療が可能になりました。また、診断機器の発展により、ごく初期の虫歯も発見できるようになり、削る前の段階で対処できるようになっています。

患者の意識の変化

インターネットなどで情報が得やすくなり、患者さん自身が歯の大切さを理解し、できるだけ削りたくないと希望するケースが増えています。予防歯科への関心も高まり、定期的なメンテナンスを受ける人も増加しています。

超高齢社会への対応

日本は超高齢社会を迎えており、自分の歯を長く保つことの重要性がますます高まっています。入れ歯やインプラントよりも、天然の歯で噛める方が生活の質は格段に向上します。そのため、できるだけ歯を削らず、長持ちさせる治療が求められているのです。

削らない治療を受けるために

歯を削らない治療を受けるためには、まず定期的な歯科検診が重要です。虫歯を早期発見できれば、削らずに治療できる可能性が高まります。また、日々の適切なセルフケアも欠かせません。

削らない治療を希望する場合は、その旨を歯科医師に伝えましょう。ミニマルインターベンションの考え方に基づいた治療を行っている歯科医院を選ぶことも大切です。ただし、虫歯の進行具合によっては、どうしても削る必要がある場合もあることを理解しておきましょう。

まとめ

歯を削らない治療法が増えている背景には、科学的根拠の蓄積、技術の進歩、そして患者さんの意識の変化があります。歯は一度削ってしまうと二度と元に戻らない貴重な組織です。

初期虫歯の段階で発見し、再石灰化療法などで削らずに対処する。どうしても治療が必要な場合も、最小限の介入で済ませる。そして何より、虫歯にならないよう予防することが最も重要です。定期的な歯科検診と日々のケアで、大切な歯を守っていきましょう。

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