お口の中のpHバランスを保つには?:むし歯を防ぐ酸塩基平衡の科学

お口の中のpHバランスを保つには?:むし歯を防ぐ酸塩基平衡の科学

お口の中のpHバランスを保つには?:むし歯を防ぐ酸塩基平衡の科学

はじめに

「pH」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。酸性やアルカリ性を示す指標で、私たちの口の中の健康状態を左右する重要な要素です。実は、むし歯は口の中のpHバランスが崩れることで発生します。食事のたびに口の中は酸性に傾き、歯が溶けやすい状態になります。しかし、私たちの体には、この状態を元に戻す素晴らしいメカニズムが備わっています。この記事では、口の中のpHバランスとは何か、なぜ重要なのか、そしてどのようにバランスを保てば良いのか、科学的根拠に基づいて詳しく解説していきます。

pHとは何か

pHの基本

pHは、0から14までの数値で表され、7が中性、7より小さいと酸性、7より大きいとアルカリ性を示します。

口の中の正常なpHは、6.8から7.0の弱酸性から中性の範囲です。この状態が、歯にとって最も健康的な環境です。

臨界pH

歯のエナメル質が溶け始めるpHを「臨界pH」といい、約5.5とされています。口の中がpH5.5以下になると、歯からカルシウムやリン酸が溶け出す「脱灰」が始まります。

これが、むし歯の始まりです。

口の中のpHが変動するメカニズム

食事による酸性化

食事、特に糖分を摂取すると、口の中のむし歯菌が糖を分解して酸を産生します。この酸により、口の中のpHは急速に低下し、5.0以下になることもあります。

食後約3分から5分で、pHは最も低くなります。

唾液による中和

酸性に傾いた口の中を元に戻すのが、唾液の働きです。唾液に含まれる重炭酸イオンやリン酸イオンが、酸を中和し、約20分から30分かけて元のpHに戻します。

この働きを、唾液の「緩衝作用」といいます。

脱灰と再石灰化

口の中がpH5.5以下になると、歯からミネラルが溶け出す「脱灰」が起こります。その後、唾液が酸を中和し、pHが5.5以上に戻ると、唾液に含まれるカルシウムとリン酸が歯に戻る「再石灰化」が起こります。

通常、この脱灰と再石灰化はバランスが取れており、歯は健康に保たれます。しかし、頻繁に飲食をすると、脱灰の時間が長くなり、再石灰化が追いつかず、むし歯になります。

pHバランスが崩れる原因

頻繁な飲食

1日に何度も間食をしたり、飲み物をダラダラと飲み続けたりすると、口の中が常に酸性状態になり、再石灰化の時間が確保できません。

酸性の強い飲食物

炭酸飲料、スポーツドリンク、柑橘系の果物やジュースなど、もともとpHが低い飲食物は、直接歯を酸にさらします。

唾液の減少

加齢、薬の副作用、ストレス、口呼吸などにより唾液の分泌が減少すると、中和作用が低下し、口の中が酸性に傾きやすくなります。

逆流性食道炎

胃酸が逆流する逆流性食道炎では、強い酸が口の中に達し、pHバランスを大きく崩します。

pHバランスを保つ方法

規則正しい食生活

間食の回数を減らし、食事の時間を決めることが最も重要です。理想的には、3度の食事と1回から2回の間食に留め、その間は水以外は口にしない時間を作りましょう。

これにより、唾液が口の中を中和し、再石灰化する時間を確保できます。

食後の水を飲む

食事や間食の後、すぐに水で口をすすぐか、水を飲むことで、口の中の酸や糖分を洗い流し、pHの回復を早めることができます。

ガムを噛む

食後にキシリトール入りのガムを噛むことで、唾液の分泌が促進され、中和作用が高まります。キシリトール自体にも、むし歯菌の活動を抑制する効果があります。

唾液の分泌を促す

よく噛んで食べる、唾液腺マッサージをする、水分をこまめに摂取するなど、唾液の分泌を促す習慣を身につけましょう。

唾液の量が多ければ多いほど、中和作用が強くなり、pHバランスを保ちやすくなります。

アルカリ性食品を取り入れる

チーズ、牛乳、ヨーグルトなどの乳製品は、口の中のpHを上昇させる効果があります。食後のデザートにチーズを少量食べることは、pHバランスを整えるのに効果的です。

重曹うがい

コップ一杯の水に小さじ半分程度の重曹(食用)を溶かしてうがいをすることで、口の中を中和できます。週に1回から2回程度行うと効果的です。

ただし、高血圧の人は医師に相談してから行いましょう。

ストローの活用

酸性の飲み物を飲む際、ストローを使うことで、歯への直接的な接触を減らし、pHへの影響を最小限に抑えられます。

酸性の強い飲食物との付き合い方

飲むタイミング

炭酸飲料やジュースなどの酸性飲料は、食事と一緒に摂取し、ダラダラと飲み続けないことが重要です。

飲んだ後のケア

酸性の飲食物を摂取した後は、すぐに歯を磨きたくなりますが、実は30分程度待つべきです。酸で歯の表面が一時的に柔らかくなっているため、すぐに磨くと歯を傷つけてしまいます。

まずは水で口をすすぎ、30分経ってから歯を磨きましょう。

代替品を選ぶ

可能であれば、水やお茶など、酸性度の低い飲み物を選びましょう。

pHバランスと歯磨き

フッ素の役割

フッ素入り歯磨き粉を使用することで、歯のエナメル質が強化され、酸に対する抵抗力が高まります。

また、フッ素は再石灰化を促進する効果もあります。

歯磨きのタイミング

朝晩2回、特に就寝前の歯磨きは徹底的に行いましょう。就寝中は唾液の分泌が減少し、pHバランスが崩れやすくなるため、寝る前に口の中をきれいにしておくことが重要です。

過度な歯磨きは逆効果

1日に何度も強く磨きすぎると、歯のエナメル質を傷つけてしまいます。適度な回数と力加減を守りましょう。

唾液検査でpHバランスを知る

歯科医院では、唾液のpHや緩衝能(中和する力)を測定する検査を受けることができます。この検査により、自分のむし歯リスクを客観的に知ることができます。

特にむし歯になりやすい人は、一度検査を受けてみることをお勧めします。

ライフスタイルとpHバランス

ストレス管理

ストレスは、唾液の分泌を減少させます。適度な運動、十分な睡眠、リラックスする時間を設けることで、ストレスを管理し、唾液の分泌を正常に保ちましょう。

禁煙

喫煙は、唾液の分泌を減少させ、口の中を乾燥させます。pHバランスを保つためにも、禁煙が推奨されます。

鼻呼吸を心がける

口呼吸は、口の中を乾燥させ、唾液の自浄作用を低下させます。日中から鼻呼吸を意識し、就寝中の口呼吸を防ぐ対策も検討しましょう。

年齢とpHバランス

子ども

子どもは、唾液の緩衝能が大人に比べて低い傾向があります。よく噛む習慣をつけることで、唾液腺が発達し、緩衝能も向上します。

高齢者

加齢により唾液の分泌が減少する傾向があります。水分をこまめに摂取する、唾液腺マッサージをするなど、意識的に唾液の分泌を促すことが重要です。

pHバランスと全身の健康

口の中のpHバランスは、歯の健康だけでなく、全身の健康とも関連しています。口腔の健康状態が悪いと、糖尿病、心臓病、認知症などのリスクが高まることが研究で示されています。

pHバランスを保つことは、全身の健康維持にもつながります。

まとめ

口の中のpHバランスを保つことは、むし歯予防の基本です。食事のたびに口の中は酸性に傾きますが、唾液の働きにより、約20分から30分で元に戻ります。

このメカニズムを理解し、規則正しい食生活、食後の水やガム、唾液の分泌促進、アルカリ性食品の活用など、日常生活の中でできることを実践しましょう。

pHバランスを保つことで、脱灰と再石灰化のバランスが保たれ、健康な歯を維持できます。今日から、口の中のpHを意識した生活を始めてみませんか。

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是非、ご来院ください。

 

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