顎が開かない、痛いときの対応

顎が開かない、痛いときの対応

顎が開かない、痛いときの対応

はじめに

顎の関節や筋肉に問題が生じると、口を開けることが困難になったり、強い痛みを感じたりすることがあります。このような症状は顎関節症(TMD:Temporomandibular Disorders)と呼ばれ、現代社会において多くの人が経験する可能性のある疾患です。ストレス社会や食生活の変化、デスクワークの増加などにより、顎関節症の患者数は年々増加傾向にあります。

顎が開かない、痛いという症状は、日常生活に大きな影響を与えます。食事を摂ることが困難になったり、会話や笑顔に支障をきたしたり、睡眠の質が低下したりと、その影響は多岐にわたります。しかし、適切な対応と治療により、多くの場合症状の改善が期待できるため、正しい知識を身につけることが重要です。

顎関節症の症状と原因

主な症状

顎関節症の症状は個人差が大きく、軽度から重度まで様々です。最も一般的な症状として、口を開けにくい開口障害があります。正常な場合、口は指3本分(約4センチ)程度開くことができますが、顎関節症では2センチ以下しか開かないこともあります。

痛みの症状も特徴的で、顎関節部分の痛み、頬や側頭部の筋肉痛、耳の奥の痛みなどが現れます。また、顎を動かす際にカクカク、ジャリジャリといった関節音が生じることも多く見られます。さらに、頭痛、肩こり、首の痛み、めまい、耳鳴りなど、一見顎とは関係のない症状が併発することもあります。

発症の原因

顎関節症の原因は複合的であり、単一の要因で発症することは稀です。最も多い原因の一つは、歯ぎしりや食いしばりなどの悪習癖です。特に睡眠中の歯ぎしりは無意識に行われるため、顎関節や筋肉に持続的な負荷をかけ続けます。

ストレスも大きな要因となります。精神的なストレスは筋肉の緊張を引き起こし、顎周辺の筋肉にも影響を及ぼします。また、噛み合わせの異常、外傷、姿勢の悪さ、硬い食べ物の過度な摂取なども発症に関与することがあります。

女性に多く見られる傾向があり、これはホルモンバランスの変化や関節の構造的な違いが関係していると考えられています。

急性期の対応方法

安静と冷却

顎関節症の急性期、特に強い痛みと炎症がある場合は、まず安静にすることが重要です。無理に口を大きく開けようとしたり、硬い食べ物を噛もうとしたりすることは避けてください。これらの行為は症状を悪化させる可能性があります。

炎症が強い場合は、氷嚢や冷却パックを使用して顎関節部分を冷やすことが効果的です。15〜20分間冷却し、30分程度休憩してから再度冷却するサイクルを繰り返します。ただし、皮膚に直接氷を当てることは凍傷の原因となるため、必ずタオルなどで包んでから使用してください。

食事の工夫

急性期の食事は、顎に負担をかけないよう特別な配慮が必要です。硬い食べ物、大きく口を開けて食べる必要のある食べ物は避け、柔らかくて小さく切った食品を選択してください。

具体的には、おかゆ、スープ、ヨーグルト、ゼリー、バナナなどの柔らかい食品が適しています。野菜は十分に茹でて柔らかくし、肉類はミンチ状にするか、煮込んで柔らかくしてから摂取します。また、一口サイズを小さくして、咀嚼回数を減らすことも重要です。

ガムを噛む、硬いパン、ナッツ類、りんごを丸ごと噛むなどの行為は症状を悪化させるため、完全に避けるべきです。

薬物療法

痛みが強い場合は、市販の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の使用が効果的です。イブプロフェンやロキソプロフェンなどが一般的に使用されます。これらの薬剤は炎症を抑制し、痛みを軽減する効果があります。

ただし、胃腸障害などの副作用のリスクがあるため、用法・用量を守って使用し、長期間の連続使用は避けてください。また、他の薬剤を服用している場合や、アレルギーの既往がある場合は、薬剤師や医師に相談してから使用することが重要です。

筋肉の緊張が強い場合は、筋弛緩作用のある薬剤が処方されることもありますが、これは医師の診断と処方が必要です。

セルフケアの方法

温熱療法

急性期の炎症が落ち着いた後は、温熱療法が効果的です。温かいタオルや湯たんぽを使用して、顎関節周辺の筋肉を温めることで血行を促進し、筋肉の緊張を緩和することができます。

入浴時に湯船にゆっくりと浸かることも全身の筋肉をリラックスさせ、顎周辺の筋肉の緊張緩和に効果があります。ただし、炎症がある急性期には温熱療法は逆効果となる場合があるため、症状の状態を見極めて使用することが大切です。

ストレッチとマッサージ

顎関節症の改善には、適切なストレッチとマッサージが有効です。まず、軽く口を開けた状態で、下顎をゆっくりと左右に動かす運動を行います。痛みのない範囲で行うことが重要で、無理をしないことが基本です。

咀嚼筋のマッサージも効果的です。頬骨の下やこめかみの部分を指でやさしくマッサージし、筋肉の緊張をほぐします。マッサージは強く押しすぎず、心地よいと感じる程度の圧力で行ってください。

舌の運動も顎関節症の改善に役立ちます。舌を上顎に押し付けた状態でゆっくりと口を開ける運動や、舌で頬の内側を押す運動などがあります。これらの運動は顎関節の可動域を改善し、筋肉のバランスを整える効果があります。

姿勢の改善

現代社会において、長時間のデスクワークやスマートフォンの使用により、首や肩の姿勢が悪化し、これが顎関節症の原因となることがあります。正しい姿勢を意識し、定期的にストレッチを行うことが重要です。

頭部前方姿勢(ヘッドフォワードポスチャー)は顎関節に負担をかけるため、顎を軽く引いて首を伸ばした正しい姿勢を心がけてください。また、肩甲骨を寄せて胸を開く姿勢も、顎関節への負担を軽減します。

生活習慣の改善

ストレス管理

ストレスは顎関節症の大きな要因の一つであるため、効果的なストレス管理が症状の改善に重要です。深呼吸、瞑想、ヨガなどのリラクゼーション法を日常的に実践することで、全身の筋肉の緊張を緩和することができます。

十分な睡眠も重要で、質の良い睡眠は身体の回復力を高め、筋肉の緊張を和らげます。就寝前のリラクゼーションタイムを設け、スマートフォンやパソコンの使用を控えることで、睡眠の質を向上させることができます。

悪習癖の改善

歯ぎしりや食いしばりなどの悪習癖を改善することは、顎関節症の治療において極めて重要です。日中の食いしばりは意識的に改善することが可能で、「唇は閉じて、歯は離す」を合言葉に、普段から上下の歯を接触させないよう心がけてください。

夜間の歯ぎしりや食いしばりは無意識に行われるため、歯科医師に相談してナイトガード(マウスピース)の作製を検討することが効果的です。ナイトガードは歯や顎関節を保護し、筋肉の緊張を緩和する効果があります。

頬杖をつく、片側だけで噛む、ペンを噛む、爪を噛むなどの習癖も顎関節に負担をかけるため、意識的に改善していくことが大切です。

医療機関受診の目安

受診すべき症状

顎関節症の症状が以下のような場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。強い痛みが1週間以上継続する場合、口が全く開かない、または指1本分も開かない場合、顎が外れたような感覚がある場合は、緊急性が高い状態です。

また、発熱、顔面の腫れ、リンパ節の腫れなどの炎症症状が併発している場合や、頭痛、めまい、耳鳴りなどの神経症状が強い場合も、専門的な診断と治療が必要です。セルフケアを行っても症状が改善しない場合や、日常生活に著しい支障をきたしている場合も受診の目安となります。

診療科の選択

顎関節症の治療は、主に歯科口腔外科、顎関節症専門外来、ペインクリニックなどで行われます。まずは歯科医院で相談し、必要に応じて専門医療機関への紹介を受けることが一般的な流れです。

症状が複雑で多科にわたる場合は、総合病院での受診も選択肢となります。心因性の要素が強い場合は、心療内科や精神科との連携も重要になることがあります。

予防法と長期管理

予防的な生活習慣

顎関節症の予防には、日常的な生活習慣の改善が重要です。バランスの取れた食事を摂り、硬すぎる食べ物は避け、両側の歯で均等に噛むよう心がけてください。また、大きく口を開けすぎないよう注意し、あくびをする際は手で顎を支えるなどの配慮も効果的です。

定期的な運動は全身の筋肉のバランスを整え、ストレス解消にも効果があります。特に肩や首のストレッチを日常的に行うことで、顎関節への負担を軽減することができます。

長期的な管理

顎関節症は慢性化しやすい疾患であるため、長期的な管理が重要です。症状が改善しても、予防的なセルフケアを継続し、定期的な歯科検診を受けることが再発防止に繋がります。

ナイトガードの使用、ストレス管理、適切な姿勢の維持など、日常的なケアを習慣化することで、症状の悪化を防ぎ、快適な日常生活を維持することができるでしょう。

まとめ

顎が開かない、痛いという症状は決して軽視してはならない問題です。適切な初期対応、継続的なセルフケア、そして必要に応じた専門的な治療により、多くの場合症状の改善が期待できます。早期の対応と正しい知識に基づいたケアにより、顎関節症による日常生活への影響を最小限に抑えることが可能です。

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