セラミックと銀歯の違い
セラミックと銀歯の違い
セラミックと銀歯の違い
はじめに
歯科治療において、虫歯や歯の損傷を修復するための選択肢は年々多様化しています。その中でも特に一般的な二つの選択肢として、セラミックと銀歯(金属冠)があります。これらは同じ目的のために使用されるものですが、素材、見た目、耐久性、価格など様々な面で大きく異なります。本稿では、セラミックと銀歯の違いについて詳しく解説し、それぞれのメリット・デメリットを比較検討します。
セラミックとは
セラミックは、陶材を主成分とした歯科材料です。天然の歯に近い白色を持ち、光の透過性や反射特性も天然歯に近いことから「審美性に優れた素材」として評価されています。セラミックには様々な種類があり、一般的にはポーセレン(磁器)、ジルコニア、e.max(リチウムジシリケート)などが使用されています。
セラミックの歴史は比較的新しく、審美歯科の発展とともに普及してきました。特に1980年代以降、CAD/CAM技術の進歩によって、精密なセラミック修復物の製作が可能となり、現在では多くの歯科医院で標準的な治療オプションとして提供されています。
銀歯とは
銀歯とは一般的に金属冠と呼ばれるもので、銀色の金属合金を使用した歯の被せ物です。正確には「銀歯」という名称は俗称であり、実際には銀だけでなく金、パラジウム、銅などの複数の金属を含む合金が使用されています。日本では「銀歯」と呼ばれることが多いですが、「金銀パラジウム合金」が主流です。
銀歯は長い歴史を持ち、耐久性や強度の高さから従来から広く使用されてきました。保険適用の治療としても認められており、経済的な負担が少ない修復方法として多くの患者に選ばれてきました。
素材の違い
セラミックの素材特性
- 組成: ケイ素、アルミニウム、カルシウムなどの無機物質を高温で焼成
- 硬度: モース硬度約5.5〜7.0(種類による)
- 特徴: 生体親和性が高く、金属アレルギーの心配がない
- 種類: ポーセレン、ジルコニア、e.maxなど複数の種類がある
ジルコニアは特に強度が高く、奥歯のような咬合圧がかかる部位にも使用できます。一方、従来のポーセレンは審美性に優れていますが、強度はジルコニアより劣るため、前歯など見た目が重視される部位に適しています。最近では、審美性と強度を両立したe.maxなどの新素材も普及しています。
銀歯の素材特性
- 組成: 金、銀、パラジウム、銅などの合金
- 硬度: モース硬度約4.0〜4.5
- 特徴: 強度と耐久性に優れるが、金属アレルギーのリスクがある
- 種類: 金銀パラジウム合金(12%金銀パラジウム合金)、純チタン、コバルトクロム合金など
保険診療で使用される銀歯の多くは「金銀パラジウム合金」であり、金が12%程度含まれています。純チタンやコバルトクロム合金などは、より耐腐食性が高く、アレルギー反応が少ない特徴があります。
見た目の違い
セラミックの審美性
セラミックの最大の特徴は、天然歯に近い見た目を再現できる点です。以下の点で審美性に優れています:
- 色調: 天然歯の白色や半透明感を再現可能
- 光の透過性: 光を通す性質(半透明性)があり、自然な見た目になる
- 変色: ほとんど変色しない
- 照明下での見え方: 蛍光性があり、様々な照明下でも自然に見える
特に前歯など人目につきやすい部位では、セラミックの審美性は大きなメリットとなります。笑った時に金属が見えることによる心理的なストレスを感じる必要がなく、自信を持って笑顔を見せることができます。
銀歯の見た目
銀歯は名前の通り銀色(金属色)をしており、天然歯とは明らかに異なる見た目となります:
- 色調: 金属色(銀色)で天然歯とは大きく異なる
- 光の反射: 金属特有の光沢がある
- 変色: 長期使用で変色や腐食の可能性がある
- 目立ち: 特に笑った時や大きく口を開けた時に目立つ
銀歯は奥歯など目立ちにくい部位では問題が少ないものの、前歯や小臼歯に使用すると審美的な問題が生じることがあります。また、時間の経過とともに金属の酸化や腐食により、歯茎が黒ずむ「メタルタトゥー」と呼ばれる現象が起こることもあります。
耐久性と機能性の違い
セラミックの耐久性と機能性
セラミックの耐久性は種類によって異なりますが、近年の技術進歩により大幅に向上しています:
- 平均寿命: 10〜15年程度(適切なケア・種類による)
- 咬合力への耐性: ジルコニアは特に高い強度を持つ
- 摩耗性: 対合歯(噛み合う反対側の歯)を摩耗させる可能性がある
- 破折リスク: 強い衝撃で破折する可能性がある(特に従来のポーセレン)
ジルコニアセラミックは特に強度が高く、奥歯にも使用可能ですが、従来のポーセレンは脆さがあるため、強い力がかかる部位には不向きとされてきました。しかし、最近のハイブリッドセラミックや強化型セラミックは耐久性が向上しており、適用範囲が広がっています。
銀歯の耐久性と機能性
銀歯は耐久性において非常に優れた特性を持っています:
- 平均寿命: 15〜20年以上(適切なケア・素材による)
- 咬合力への耐性: 優れた強度を持ち、奥歯の咬合圧にも耐える
- 摩耗性: 天然歯に近い摩耗特性を持つ
- 破折リスク: セラミックに比べて低い
銀歯の耐久性の高さは、特に強い咬合力がかかる奥歯部分での使用に適しています。また、製作精度も高く、噛み合わせの調整も比較的容易であるため、機能性においても優れています。
費用と保険適用の違い
セラミックの費用
セラミックは主に自費診療となるため、保険診療に比べて高額になります:
- 保険適用: 基本的に保険適用外(一部例外あり)
- 費用範囲: 1本あたり約3万円〜15万円程度(種類や歯科医院による)
- 種類による差: ジルコニアやe.maxなど素材によって価格が異なる
- 地域差: 都市部と地方で価格差がある場合も
ただし、前歯の一部に限り「CAD/CAM冠」として保険適用される場合があります。これは、コンピュータ制御の機械で削り出したハイブリッドレジンという素材で、完全なセラミックではありませんが白い被せ物として保険内で選択できるオプションです。
銀歯の費用
銀歯は保険診療として認められており、経済的な負担が少ない選択肢です:
- 保険適用: 基本的に保険適用内
- 費用範囲: 1本あたり数千円程度(保険診療の場合)
- 自費診療: ゴールド(金合金)などの高級素材は自費診療となる
- メンテナンス費用: 比較的低コスト
保険診療の銀歯は金銀パラジウム合金が主流ですが、純金や白金加金などの高級素材を使用する場合は自費診療となり、1本あたり10万円以上する場合もあります。
治療過程と時間の違い
セラミック治療の流れ
セラミック治療は精密な作業が必要で、複数回の通院が一般的です:
- 診査・計画: 歯の状態確認と治療計画の立案
- 歯の形成: 被せ物を装着するために歯を削る
- 型取り: 精密な型取りを行う(デジタルスキャンの場合もある)
- 仮歯装着: 本製作中は仮歯を装着
- 技工所での製作: 専門の技工士によるセラミック製作(約1〜2週間)
- 試適・調整: 完成した被せ物の確認と微調整
- 装着: 専用のセメントで接着
最近ではCAD/CAM技術の発展により、一日で治療が完了する「ワンデイトリートメント」も可能になっていますが、多くの場合は2〜3回の通院が必要です。
銀歯治療の流れ
銀歯の治療過程はセラミックと基本的に同じですが、製作工程や時間に違いがあります:
- 診査・計画: 歯の状態確認と治療計画の立案
- 歯の形成: 被せ物を装着するために歯を削る
- 型取り: 印象材を使用した型取り
- 仮歯装着: 本製作中は仮歯を装着
- 技工所での製作: 金属鋳造による製作(約1週間)
- 試適・調整: 完成した被せ物の確認と微調整
- 装着: セメントによる装着
銀歯の製作は比較的シンプルで、セラミックに比べて技術的難易度が低いため、製作期間が短く、調整も容易です。
健康面への影響の違い
セラミックの健康面
セラミックは生体親和性が高く、健康面でいくつかの利点があります:
- 金属アレルギー: 金属を含まないため、金属アレルギーの心配がない
- 生体親和性: 生体組織との親和性が高い
- 歯茎への影響: 適切に製作・装着された場合、歯茎の黒ずみが起こりにくい
- 二次虫歯: 適合性が優れていれば、二次虫歯のリスクは低い
セラミックは口腔内での化学反応が少なく、金属イオンの溶出などの心配がありません。そのため、金属アレルギーを持つ患者や、より自然な口腔環境を望む患者に適しています。
銀歯の健康面
銀歯は長期間の使用実績がありますが、いくつかの健康上の懸念点も指摘されています:
- 金属アレルギー: 含有金属によってアレルギー反応を引き起こす可能性
- 金属イオンの溶出: 唾液との接触で微量の金属イオンが溶け出す可能性
- 歯茎への影響: 長期使用で歯茎の変色(メタルタトゥー)の可能性
- 電位差: 異なる金属との電位差による不快感(ガルバニック作用)
金属アレルギーの心配がある場合は、パッチテストなどで事前に確認することが重要です。また、複数の異なる金属が口腔内にあると、電位差による「ピリピリ」とした不快感を感じることがあります。
選択のポイント
どちらの選択肢が適しているかは、患者の状況や優先事項によって異なります。以下のポイントを考慮して選択することが重要です:
セラミックが適している場合
- 審美性を重視する: 前歯や見た目が気になる部位
- 金属アレルギーがある: 金属を含まないため安心
- 長期的な健康を重視: 生体親和性が高い
- 費用面で余裕がある: 高額な治療費を許容できる
銀歯が適している場合
- 耐久性を重視する: 強い咬合力がかかる奥歯部分
- 経済性を重視する: 保険診療で経済的負担を抑えたい
- 治療期間の短縮: 比較的シンプルな製作過程
- 金属アレルギーがない: 金属による問題がない
まとめ
セラミックと銀歯は、それぞれに特徴とメリット・デメリットがあります。セラミックは審美性と生体親和性に優れる一方で、銀歯は耐久性と経済性に優れています。どちらを選択するかは、治療部位、予算、審美的要求、健康上の懸念など、患者個人の状況と優先事項によって異なります。
歯科医師との十分な相談を通じて、自分に最適な選択肢を見つけることが重要です。また、どちらの選択肢においても、定期的な歯科検診と適切な口腔ケアを継続することで、修復物の寿命を延ばし、健康な口腔環境を維持することができます。
最終的には、見た目、耐久性、費用、健康面などを総合的に考慮し、自分にとって最も価値のある選択をすることが大切です。歯科医療の進歩により、今後も新しい素材や技術が登場することで、より良い選択肢が増えていくことでしょう。
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